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ナタネの花 

カテゴリ:生命光体

僕は、君ほどに、美しい人を見たことがない。
君ほどに、僕の心がとび出して、お迎へする(うつくしい)人を、
見たことがない。
君ほどに、美しい人を見られないと思ふ心がきまる。

いいえ、熱中して(よく)聞いてください。
ホントです。僕の心のすべてをひろげ出して(ホント)ゐます。

サクラの花を一番に共鳴(スキ)と言ふ人がゐるでしょう。
バラの花のほうが情熱的で夢中(よい)と言ふ人もゐるでしょう。
菊のほうが、スガスガしくて、名残り惜しげで抱擁(よい)といふ人もゐる筈です。

僕にはナタネの花畑のほうが、一番にゆたかな香りと明るさ、
ともにあふれてゐて、
心は愛情の静けさにくる(やすまる)のです。

僕には、ナタネの花畑が一番美しいと、目も心も、
その不滅さにとりすがる(したしむ)のです。

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ナタネの茎も莢靭な愛抱の皮につつまれてゐる。
その枝は分枝はげしくて、まことに社交性に富んでゐようし、
タネをおさへ込む(まもる)莢の先は、突塔のように自分を守備して鋭く尖る。
僕は、いっぱいの甘いにほひが炎し、黄色い貯蓄(たくはへ)を
ふんだんに開いてゐる菜の花畑にくると、
その分枝の和合性や、
その莢の直情性や、
その子実の弾力性や、の
息深いこころにふれて行き、やがて時のたつのを忘れてしまふ踊り(たのしさ)にゐる。

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僕にとっては、ナタネの花畑が、この世で一番美しいのです。
その花を、一番にキレイだと君に言ふ。

菜の花のソバにゐるとき、僕はさまざまに語ってゐる。
だから僕は、君ほどにキレイな人を見たことがない。
君は僕の心を奪って(まったく)、美しいのです。

シブヤ シゲヨシ 「生命光体」より

原文の表記は、例えば「とび出して、お迎えする」の横に「ウツクシ」とルビが振ってあります。
これは、「ウツクシ=美し」という言葉は「とび出して、お迎えする」という感情を表している事を意味しています。
父は次のように解説しています。
ウの声は、発出心。感動や感嘆の声。
ツはタ行 進取心。進み出て。
クはカ行 迎入心。迎え入れれる。
シはサ行 原体心。状態、ことがら。
つまり、ウツクシとは、「感動して、進み出て迎え入れる」感情が声として発せられたものだというのです。

ここではカッコ内の言葉が表す感情を青色の文字で表記してあります。
理屈はあまり考えずに、声の感情、言葉の感情を綴った詩として捉えると面白いのではないかと思います。



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